事業団の発掘と整理
調査研究員のイチ推し

09 前橋城遺跡の景徳鎮窯蓮子碗(けいとくちんようれんつわん)

戦国時代(15世紀後半から16世紀初頭) 前橋城(まえばしじょう)遺跡(前橋市大手町)

飯森 康広
 私のイチ推しは、前橋城遺跡で出土した景徳鎮窯製の染付(そめつけ)碗です。
 遠く中国で焼かれ、貿易によって日本へ運ばれ、たどり着いた焼き物です。焼かれた年代は15世紀後半から16世紀初頭で、ちょうど前橋城の前身の厩橋(まやばし)城が築城された頃です。誰が入手したのか分かりません。県内ではお城での出土が目立つ特別な出土品です。城主長野氏のものだとすれば、つながりの強かった関東管領上杉氏から下賜(かし)されたのかもしれません。
 染め付けは青色で絵付けをしたものです。まず、目につくのが胴部下半に描かれた大きな葉っぱで、芭蕉(ばしょう)葉文と言います。あのバナナみたいな葉っぱです。お庭に植えてありませんか。口縁部にゴチャッと描かれているのが、波濤(はとう)文です。よく見れば波に見えますね。この二つの文様の組み合わせは、現代の着物の絵柄でも使われているそうです。

【群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館 収蔵展示室】