事業団の発掘と整理
調査研究員のイチ推し

07 埋納された銅志貴形水瓶(どうしぎがたすいびょう)

中世 和田山天神前(わだやまてんじんまえ)遺跡(高崎市箕郷町)

多田宏太
 私のイチ推しは、和田山天神前遺跡の中世土坑から出土した青銅製の水瓶です。高さは28.4㎝ほどで、注口の根元や把手の付け根に精緻な文様が鋳出され、特に蓋に付けられた獅子形の紐(ちゅう)と把手(とって)をつなぐ蝶番(ちょうつがい)の造形が印象的です。
 この水瓶は、奈良県の霊場信貴山(しぎさん)に伝来した水瓶と同じ形式であることから、銅志貴形(または信貴山形)水瓶と呼ばれています。同じ形式の水瓶は東京国立博物館の収蔵品の中にもあります。
 青銅製の水瓶はかなりの高級品であり、所有者は中央勢力との深いつながりがあったことが推測されます。また、水瓶は仏教との関係が深い器と考えられていますが、和田山天神前遺跡では中世の寺院が見つかっていますので、そこでなんらかの儀式に使われた後に土坑に埋納されたのでしょうか。

【群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館 収蔵展示室】