事業団の発掘と整理
調査研究員のイチ推し

11 下小林上(しもこばやしかみ)遺跡の土製紡錘車(どせいぼうすいしゃ)

古墳時代前期(3世紀後半) 下小林上遺跡(太田市下小林町)

大木紳一郎
 私のイチ推しは下小林上遺跡の土製紡錘車です。
 紡錘車とは、中心の孔に軸棒を差し入れ、棒の先につけた繊維を回転させて糸の撚りをかけるための「はずみ車」です。弥生文化とともに日本列島に広がった渡来系の道具といわれています。糸の太さや繊維の質などによって、紡錘車の大きさや重さを変えたと考えられますが、直径は4~5㎝ほどのものが多いようです。
 下小林上遺跡の紡錘車は、直径4.8㎝、重さは46gで、小さな穴を放射状につけた文様が特徴です。この文様の紡錘車は、茨城県や北海道でも知られていますが、群馬県の遺跡では、「十王台式(じゅうおうだいしき)」という茨城県で誕生した後期弥生土器と一緒に出土することがわかっています。
 弥生時代末期から古墳時代の初めにかけては、遠方からの土器の移入が急激にさかんになり、物資の流通だけでなく、小規模な集団の移住も考えられています。下小林上遺跡の紡錘車は、古墳時代初めの竪穴建物から出土しましたが、こういった社会情勢のなかで、はるばる茨城県から移住してきた人々の「忘れがたみ」なのかもしれません。

【群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館 収蔵展示室】