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陣谷(じんや)遺跡

平成31年3月 調査
調査場所
館林市楠町
調査期間
平成31年1月1日~平成31年3月31日
調査原因
平成30年度山王赤生田線バイパス社会資本総合整備事業に伴う埋蔵文化財の発掘調査
委託者
群馬県館林土木事務所
主な時代
縄文・古墳・古代・中近世
遺跡の内容
3月は、3区北半部(低地)と南半部(微高地)で調査を行いました。北半部(低地)では、遺物包含層をさらに下層へと調査を進め、かつて河原だった砂利層に到達しました(写真1)。この砂利層からも縄文・古墳時代の土器が大量に出土しました。また、1号馬鍬(1月紹介)周辺を拡張した結果、同じ地層からもう1点馬鍬(2号馬鍬)が出土しました(写真2)。2号馬鍬は台木の一部と破損した木製歯2本のみのでしたが、1号馬鍬と台木の太さや木製歯の長さがよく似ており、同じ形状の馬鍬だったと考えられます。
南半部(微高地)では、盛土状遺構と遺物集中部を調査しました。盛土状遺構は、浅間Bテフラ(As-B・1108年降下)の下位から検出され、当時の谷や凹凸地形を平らに均すようにロームと黒色土を版築して盛土していました(写真3)。時代は古代と考えられます。遺物集中部は、シルト層から古墳時代の坏や壺、甕など約50点がまとまって出土しました(写真4)。土器内部の土を全部洗浄しましたが、臼玉や勾玉などは見つかりませんでした。これらの土器は当時湿地だった微高地に並べて置かれたもので、祭祀遺構の可能性もあります。
3月で今年度の調査は終了し、次のような成果がありました。まず、馬鍬の発見により古代の水田農耕の仕組みの解明につながる貴重な手がかりが得られました。次に、大溝と盛土状遺構の発見により古代のこの地域で大規模な土木工事が行われていたことがわかりました。今後は馬鍬が製作された年代・製作方法、古代の水田農耕の仕組み、古代の土木工事が行われた具体的な年代・目的そして時代背景について分析していく予定です。
連絡先
公益財団法人 群馬県埋蔵文化財調査事業団 0279-52-2511
写真1 北半部(低地)の調査(東から)
写真2 2号馬鍬・出土状態
写真3 南半部(微高地)・盛土状遺構(東から)
写真4 遺物集中部の調査(東から)