古墳時代
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振り分け髪の男子埴輪(ふりわけがみのだんしはにわ)
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.ふりわけがみのだんしはにわ
■時 代
6世紀後半
■出土地
高崎市観音山古墳
■寸 法
高さ1.55m
■保管等
群馬県立歴史博物館
 現在のように理髪店があり、しじゅう散髪をすることができなかった古墳時代、長く伸びてしまう髪の毛の処理は、女性だけの特権ではなかった。むしろ、外での活発な行動がつきまとう男性の方が切実な問題であったかもしれない。
 この男子埴輪の髪形は、比較的地位の高い男性に一般的なものであったことを、多くの埴輪が示している。中心の髪は左右の振り分け髪にし、両側の髪は束ねてさらに折り畳んで美豆良(みずら)と呼ばれるお下げのように結っており、後ろ髪は束ねて真後ろに垂らしている。この埴輪の場合、振り分け髪が横にぴんと張って帽子をかぶっているように見えるのは、リアルさに欠ける点である。
  また、装束は、腰帯と上衣の裾には鈴がぐるりと取り付けられている。腰帯に鈴が取り付くのは、石室内の金銅製大帯(だいたい)に共通するところであるが、衣服にまで付けるとは、よっぽどの鈴好きだったのであろう。腰に下げた鞆(とも)の先にもついている。

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馬ひきの男子埴輪(うまひきのだんしはにわ)
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.うまひきのだんしはにわ
■時 代
6世紀後半
■出土地
高崎市観音山古墳
■寸 法
高さ98.5cm
■保管等
群馬県立歴史博物館
 前方部前面の基壇上に置かれた馬形埴輪の傍らから出土した。石室周辺に置かれた人物埴輪群とは扱いが異なっていたことがわかる。事実、大きさもだいぶ小ぶりである。ここでは馬が主役。人物はこれに付随するものと言えよう。
 服装の様子を知る衣服の表現はほとんどない。わずかに腰のところの簡易なひもにより、裸ではないことを知るのみである。髪の毛の表現も、耳のところで軽く結われた美豆良(みずら)のみである。社会的地位の低さを如実に物語っている。
 裏側は、腰ひもに鎌がさしてある。馬に餌を与えるための草刈り鎌であろう。
 石室前に配置された埴輪群は、過度の装飾性と威圧的な雰囲気が目に付く。それとくらべると、この人物埴輪は簡略化の極致にある。製作に要した時間も、両者で雲泥の差があった。ところが、皮肉なことに短時間でつくったこの埴輪の方が、親しみやすく人間味を帯びている。これを製作した埴輪工人の心が通ったためであろう。
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銅製水瓶(どうせいすいびょう)
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.どうせいすいびょう
■時 代
6世紀後半
■出土地
高崎市観音山古墳
■寸 法
高さ31.3cm
■保管等
文化庁
 観音山古墳の石室内から豪華で豊富な副葬品が出土している。それらのうちには中国・朝鮮半島に直接的な系譜が求められる遺物も少なくない。このことは、六世紀後半以降、国際的な交流が活発になりつつあった歴史的背景と大いに関係している。
 それらの中でも出色はこの銅製の水瓶である。卵形をした胴と、そこからきゅっとすぼまって細長く伸びるくびがおりなす形は、それ以前に見たことのないエキゾチックなものであった。蓋(ふた)を取り外すと、両側に弓なりにひろがるピンセットのような銅線がつまみにつながっており、蓋が外れるのを防いでいる。この容器は実用的なものではなく、水を浄める役割を果たす仏器の一種であった。
 これによく似たものは、明治時代に法隆寺が皇室に献上した献納宝物品のなかに見いだせる。いまのところ朝鮮半島には類品は見られず、隋(ずい)の前代にあたる南北朝時代の、北朝の地域の墳墓からの出土品に比較的よく似たものが見られる。国指定重要文化財。
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頭椎大刀(かぶつちのたち)
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.かぶつちのたち
■時 代
6世紀後半
■出土地
高崎市観音山古墳
■寸 法
長さ1.14m
■保管等
文化庁
  握りの先端にあたる柄頭(つかがしら)の部分が拳(こぶし)状にふくらんでいる形式の大刀に対して、『古事記・日本書紀』に出てくる「頭椎大刀」を対照させたものである。この種の大刀は、観音山古墳の事例が時期的に最もさかのぼるものであり、この後7世紀前半には他の形式の大刀に取って代わられるので、短期間の間に流行したものである。はたして、「記紀」にいう頭椎大刀がこの大刀を指しているのか断言はむずかしい。
 装飾性の強い大刀である。柄頭の芯(しん)は木質で、文様を打ち出した銀板で包み、金製の縁取りがなされている。柄の部分は、銀線をコイル状に巻き付けており、小ぶりの鍔(つば)は銀製、鞘(さや)の金具は金銅製と豪華そのものである。
 この大刀が実戦用のものでないことは明らかで、儀礼用であったものと思われる。国指定重要文化財。
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銀象嵌大刀(ぎんぞうがんたち)
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.ぎんぞうがんたち.ぎんぞうがんたち

■時 代
6世紀後半
■出土地
高崎市観音山古墳
■寸 法
長さ1.14m
■保管等
文化庁
 観音山古墳からは、頭椎大刀(かぶつちのたち)と同様に儀礼的性格の強い大刀がもう一振り出土している。柄頭の部分に鉄棒をねじって銀をかぶせ、半円形の環状にしたものを付けていることから「捩(ねじり)り環頭大刀」と呼称されている形式の大刀である。
 この大刀のもう一つの特徴は、鉄製の鞘口(さやぐち)と鞘尻の金具に施された銀象嵌である。掲載しているのは鞘尻金具のほうである。象嵌の手法は、鉄の本体に線で文様を刻み、そこに銀線を埋め込んで研ぎだしている。ここに描き出されたのは龍の文様であるが、本場の中国で見られる躍動的で迫力のある龍文とくらべるとずいぶんやさしい龍である。おそらく日本製であろう。見よう見まねで描かれた龍文は、はるか中国から紆余(うよ)曲折の後にやっとたどり着いたといったところであろうか。国指定重要文化財。

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