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 考古学に興味のない人たちにとって、埋蔵文化財は「化石」のようなものとしてとらえがちである。そのために、自分たちと埋蔵文化財との間に大きな隔たりを置いて、いよいよ距離を遠くしてはいないだろうか。

 本書はそうした距離を埋めたいという思いと、先祖たちの原点、美の系譜とは何か、を知るために取り組んだ。収録した出土品は、私たち群馬県人の先祖たちの生活や人生の確かな証である。そこに表現された彼らの心情や情操や信仰、すなわち「畏れと祈り」は、実は現代の私たちの心血にも脈々として流れている。出土品を目にするときおのずと立ちのぼる心のふるえこそ、私たちと先祖たちを結ぶきずなではないかと思う。

 個々の掲載物件は、「美しいこと」「貴重であること」を主な基準として選定した。縄文から平安までの時代を概観・解説するために、当初の予定を大きく上回り352ページの大部になったが、各時代の特徴は十分把握できたと思う。

 写真は古いものはできるだけ避け、可能な限り新しく撮り直した。また必要に応じて部分を拡大し複数のカットを掲載した。造形的に素晴らしい「注口土器=縄文」「人の乗る馬形埴輪=古墳」「肩に鷹をとまらせる男子埴輪=古墳」の三点は特に観音開きにして大きく扱った。さまざまな縄目の質感、装飾品の金銀の輝き、陶器の美しい彩りを、本書から想像してほしい。

 縄文人は精神的に高い豊かさの中で生活し、この土器を作ったと思われる。まぎれもない群馬県人の先祖たちである。弥生から古墳、そして飛鳥・奈良・平安時代をへて現在まで、1万年余りにわたる命と心のつながりを、これらの文化財を通して受け取っていただければ望外の喜びである。(本書「あとがき」より)


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