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金井下新田(かないしもしんでん)遺跡 【上信自動車道金井バイパス関連】

令和元年7月
弥生時代の「手習い土器」

 写真の弥生土器は、細い首の部分に描かれた櫛描文様から「樽式(たるしき)土器」と呼ばれる群馬県のスタンダードな土器です。ところが、肩に描かれた三角形の「鋸歯文(きょしもん)」が異様です。土器全体を上から見て4分割し、それぞれで描く鋸歯文がちがっています。鋸歯文は同じデザインで全周させるのが普通ですが、この土器では各々違うデザインで1~4個しか描かず、しかも仕上げの段階では両端を消してしまっています。共通するのは、どれも描き方が稚拙であることで、一見して描き慣れていないことが分かります。また鋸歯文以外でも、ある面で部分的に赤く塗り、他の面では細棒の先端で押し付ける刺突文や短い波状文を少しだけ描いています。これも稚拙というより、試しに描いてみたという感じです。このような特徴から、この壺を「手習い土器」と呼んでみました。

 土器の成形や首の櫛描文は、かなり手慣れた作り手のもので、肩の鋸歯文や赤彩、刺突などは初心者が練習用に描いたものと想像しています。とはいえ、きちんと焼いて日常容器として使っていたわけで、作り手の様々な想いが込められた大切な器だったのかもしれません。
写真1  a面の文様構成
写真2 b面の文様構成
写真3 c面の文様構成
写真4 d面の文様(肩部は無文)
写真5  a面は小ぶりの鋸歯文と赤彩
写真6 b面は大ぶりの鋸歯文
写真7 C面は大ぶりの鋸歯文と刺突
写真8 口唇部の刻み 方向がまばらで一定せず、b面では側縁にも刻みをいれる。