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茅畑・鴫上Ⅰ(かやはた・しぎがみいち)遺跡 【前橋安中富岡線関連】

平成28年4月
弥生時代後期の紡錘車(ぼうすいしゃ)
 茅畑・鴫上Ⅰ遺跡は、高崎市箕郷町白川に所在し、榛名白川の右岸に位置します。発掘調査は、平成26~27年度に行われ、整理作業は平成27年度と今年度行われています。
 発掘調査では、弥生時代と古墳時代後期から平安時代にかけての集落が発見されました。弥生時代後期の竪穴住居は16軒発見されています。
 今回、紹介するのは、弥生時代後期の竪穴住居から出土したふたつの紡錘車です。両方とも粘土を焼いて円盤状にしたものですが、特筆すべきは写真1右側の紡錘車の大きさです。直径8.4cm、中心にある孔の直径1cm、厚さ2.8cm、重さ259.3gに及びます。これ程大きな紡錘車は、群馬県内には類例がありません。本来の紡錘車の機能は、中心にある孔に棒軸をつけたものをこまのように回して糸に撚りをかけるものです。出土した紡錘車は、従来の紡錘車の概念から外れる程大きなものです。今のところ、これほどの大きさの類例がないことから実用品ではなく、紡錘車の形をした土製品と解釈したほうがよいと思われます。
もう一つ、写真1左側の紡錘車の大きさは、直径3.9cmです。中心にある孔の直径0.5mm、厚さ0.7cm、重さ25.5gあります。弥生時代の紡錘車としては、並の大きさのものです。ふたつを比べてみると、先に紹介した紡錘車の大きさが分かるか思います。小さい方の紡錘車には、文様の意味は分かりませんが、五芒星(ごぼうせい)に似た文様が刻まれています。
 弥生時代後期から古墳時代前期にかけて紡錘車の材質は、土製から石製へ、断面の形も長方形から厚みのある台形や薄い台形へと変化します。本遺跡出土の紡錘車は、材質や形からみても弥生時代後期の特徴をよく示したものであると考えられます。
写真1 大小ふたつの紡錘車
写真2 文様の刻まれた小さい方の紡錘車