事業団の発掘と整理
調査研究員のイチ推し

02 上泉唐ノ堀(かみいずみからのほり)遺跡の刃部磨製石斧(じんぶませいせきふ)~旧石器時代(約3万5千年前)の磨製技術~

後期旧石器時代 上泉唐ノ堀遺跡(前橋市上泉町)

関口博幸
刃部磨製石斧実測図(緑色は研磨した部分)
刃部磨製石斧写真
 私のイチ推しは、上泉唐ノ堀遺跡から出土した黒色頁岩(こくしょくけつがん)製の刃部磨製石斧です。年代は約3万5千年前(後期旧石器時代の初め頃)、群馬県で最古級の石器の一つです。
 特徴は、磨いて鋭い刃部をつくっている点です。資料を観察すると、まず素材を打ち欠いて楕円形に整形し、そのあと砥石で表裏両面をていねいに磨いて刃部をつくっていることがわかります。横から見た刃部の角度は表裏両面とも約30度の鋭さで、まさに「斧」の形です。
 刃部磨製石斧には、破損しても再び刃部を磨き直した例がよく見られます。壊れてもすぐには捨てずつくり直して使った、いわば旧石器時代のリユース品といえます。
 磨製石器は、海外では一般的に新石器時代から使われるようになった石器ですが、日本では後期旧石器時代の刃部磨製石斧が各地で発見されています。刃部磨製石斧は日本の旧石器文化の特徴的な石器で、後期旧石器時代の初め頃の遺跡から多く発見されていますが、約3万年前以降に姿を消します。
 用途が木の伐採用という説やナウマンゾウやオオツノシカなどの解体用という説があり、議論が続いています。

【群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館 収蔵展示室】