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発掘調査の最新情報

本郷満行原(ほんごうまんぎょうはら)遺跡

平成31年3月 調査
調査場所
高崎市本郷地内
調査期間
平成31年3月1日~平成31年3月31日
調査原因
平成30年度 社会資本整備(活力・重点)西毛広域幹線道路に伴う埋蔵文化財の発掘調査
委託者
高崎土木事務所
主な時代
縄文・弥生・古墳・奈良・平安・中近世
遺跡の内容
本遺跡は、高崎市北部の本郷町に所在し、榛名山南東麓の烏川左岸の台地上に位置しています。榛名山東南麓は、小河川により刻まれた谷地形が発達しています。遺跡地の標高は170m程です。隣接調査区には、昨年度調査された本郷広神遺跡、本郷上ノ台遺跡、また今年度、昨年度に引き続き調査実施になった本郷鶴楽遺跡が挙げられます。
今月は全調査区4,926.2㎡のうち、北側のC区を昨年度から継続する形で調査を行いました。本調査区は以前より瓦散布地として寺院跡の存在が推定されていましたが、昨年度の調査において、8世紀初頭~前半、8世紀後半~9世紀初頭の瓦が多量に出土しました。また、基壇建物跡と思われる箇所を3箇所確認することもできました。これらの結果から、今年度はこの基壇建物跡を寺院跡と想定して調査方針を立て、それぞれの建物の構造を確認するためトレンチ調査を行いました。
第1号建物跡は礎石を据える建物跡です。建物は第6号溝状遺構に東側が破壊され失われていました。トレンチは礎石の据方(すえかた)を確認するための調査でした。調査の結果、礎石は、当時の地表面上に直接据える方法を採っていました。そして、礎石を据える段階には、周囲に8世紀後半~9世紀初頭の瓦と9世紀後半の須恵器が多く散在する状態であったことが分かりました。そして、これらの瓦・須恵器に混じり焼土粒が含まれていました。
第2号建物跡も、第6号溝状遺構により北西側を切られ失っており、さらに、北側から北東側にかけて圃場の開墾・耕作により失っていましたが、南西側と南側には雨落ち溝が「L」字状に確認されました。そして、この雨落ち溝内には、被熱による剥離と燻りにより変色が生じた礫(礎石)が確認されています。さらに、雨落ち溝には多数の焼土粒が含有されていました。これらの状況は、火災により生じた事が推測されます。昨年度の調査では、この南側の雨落ち溝から多量の瓦と門扉の鉄製金具が出土しています。また、雨落ち溝内で確認されている被熱礫は、建物の礎石と判断されますが、身舎(もや:建物本体)の礎石と考えるには、礎石の礫が小規模なことから、軒先側を支えた柱の礎石であることが類推されます。この雨落ち溝は、トレンチ調査の結果、深さ15cm程の浅い溝であることが判明しました。
第3号建物跡は、第1号と第2号建物跡の中間に位置します。この建物跡とした痕跡は、第1・2号建物跡で見られた焼土粒が広範囲に散在していた。トレンチ調査の結果、浅く皿状にくぼむ状態が確認されました。詳細は次年度の調査に託されます。今回の調査では、建物が幾度も建て替えられた様子がうかがえました。調査は来年度も継続して行われる予定です。
連絡先
本郷満行原遺跡調査事務所 070-2655-7412
写真1 第1号建物内調査状況(東から)
写真2 第2号建物全景(東から)